13年前のパンドラの箱を開けてみよう

4月も1週間ほどが経とうとしていますね

 

入学式も終わり入社式も終わり

会社で言えば就職先によっては新入社員研修なるものがあるところもあるのではないでしょうか?

私も13年前、初めて社会人になるにあたり

初めて就職した(都内の)美容室はちょっとした大きなグループ美容室で

就職して2日か3日くらいサロンで働いた後に

合同で新入社員研修があるからと山中湖のほとりにある合宿所に集まり

2泊3日の新人研修なるものを受けてきました。

はい。

とても懐かしい思い出です。

 

今まで公にはしてこなかった

私が体験した新人研修がどんなものだったかふと書いてみたくなりました。

 

書かなかったのには理由があって

これからその美容室に入社する学生にとってネタばれになってはマズいな。。。

と思っていたのですが、もう最初の美容室を離れ8年ほど。

もう、私が美容師1年目にどこの美容室で働いていたかなんて

現在、美容学生にあたる方たちにはもう関係ないかなと

思い始めてきたので書きます。。。

 

この序文で既に、『あっ。普通じゃなかったんだろうな?』

とかは邪推せずに読んでみて下さいね(笑)

 

そもそも、新人研修とは何のために行われるのでしょうか?

・ビジネスマナー

・電話のうけかた

・社会人の心構え

・会社の就業規則(ルール等)

を教わるのだと思います。

とてもとても大切な内容ですね!

 

今まで20何年、学生生活を送っていて社会人へと切り替わった訳です。

それは、いきなり天と地ほどの差が生まれることは必至な訳です。

何が天と地ほどかは社会人の皆さんは周知のことかと思いますが。

自分を取り巻く周りの環境が一変します。

学生の方は楽しみ半分、不安半分くらいでドキドキしましょうね(笑)

まぁ。なんにせよ全員通り過ぎる道ですから。

 

私が20の時に体験した新人研修は忘れることもできない経験となりました。

少しだけ懐かしく思い出しながらツラツラと書いてみたいと思います。

 

ここからはいつものように長くなります。

興味無さそうであれば【戻る】をポチっとお願いします(笑)

 

私が新人研修合宿に参加するにあたり知らされたものは

集合場所・集合時間・持ち物(携帯電話、財布は持ち込み厳禁)だけです。

 

持ち物はといえば筆記用具、3日分の着替え、支給されたジャージ上下。

 

前述していますが場所は山中湖畔。

車でなければ到底、都内から行ける場所ではありません。

持ち物は今、考えてみれば『?』が浮かんで当然なのですが

当時は、待ちに待った美容師という舞台に立てる喜びが自分の脳ミソを全て占めていたため

完全に言われるがままでした(笑)

 

何かの前触れにここで気づく方はいますか?

財布、持ち込み厳禁。

万が一、何かあった時に自力でもう東京に戻ることは出来ません…。

まぁ。万が一ですけど。。。

 

当然、入社まもない美容師が集められてやる研修だったら

・シャンプー練習

・受付応対

・気持ちの良い挨拶の方法

・運が良ければカットの実習もある!?

かな?と思い意気揚々と当日の集合場所に参加しました。

 

前日は普通に配属先店舗での美容室で

何も仕事ができないなりに忙しく掃除を手伝ったり

先輩の見よう見まねで『いらっしゃいませ!』なんて

言ったりもしていました。

 

何かの時間で先輩に

『明日の新人研修って何やるんですか?先輩も行ったんですよね?』

って聞いたら笑顔で

『まぁ。行けば分かるよ。頑張ってきな!』って言ってくれたので

そりゃそうか。と思い

『はい!楽しんで行ってきます!』とでも答えたのだと思います。

思い返せばこのとき先輩が半笑いだったのと若干顔が引きつっていたかな?

と思うので、何かに気付ければ良かったのですが

先を見越す力と人を疑う力など全く当時は持ち合わせていなかったため

その日は明日から始まる【ステキ美容師ライフ】を楽しみに就寝しました。

(なんなら、可愛い子いたら仲良くなっちゃおう☆ヒャッフー!くらいに考えています。)

 

翌日、集合場所(新宿駅前)に集まり

各社、先輩が待っていてくれました。

5社か6社くらいの大型グループ美容室が集まってやる新人研修なので

新人は合計で120人くらいいたはずです。

各社ごとにバスに乗り東名高速に乗り何時間かバスで目的地の

山中湖畔研修所まで向かいました。

 

道中はそりゃあみんな学生を卒業してまだ幾日かしか経っていない人間の集まりです。

朝も早かったですが誰も眠ることなく大はしゃぎ☆

各社、引率の先輩方が何名かいたのですがバス前方に乗っていて

特別何のお咎めもなかったから、ひたすら大はしゃぎ☆

 

ひとしきり、はしゃぎ終わったあたりでバスは目的地へと到着しました。

バスを降りると先輩方が

『はーい。みんなこっちだよー。

ボードに名前と各自の部屋が書いてあるから確認して

荷物置いたらジャージに着替えて大きな体育館に集合ねー(ニコッ)』

と案内してくれます。

 

みんな個室でジャージに着替えながら

『最初は何だろうねー☆楽しみだねー☆』

なんて話しています。

誰も何の違和感も抱いてはいません。

 

ところが先ほどまで先輩たちが笑顔だったのに

体育館に向かう道中から、すれ違う先輩たちがきれいさっぱりと無表情です。

『なんだ?』とは思うものの

体育館に集まり、みんな揃うまでやっぱりピーチクパーチク続くわけです。

 

想像できますか?

体育館に120人強が集まり全員が思い思いに喋り笑っていたら

結構な騒音になるんです。

この時、先輩方は体育館の中で外側を一周ぐるっと均等感覚で囲うように並んで

手を後ろに組み足は肩幅。みたいな感じで顔はやはり無表情。

暗黙の何かでもあるかのように誰も何も声を発しません。

 

全員が集まったのを確認できたのでしょうか。

先輩の1人が外に出ていき、もう1人の別の先輩を連れてきました。

そこで、一瞬。

本当に一瞬だけその先輩を目に留めたみんなが静かになります。

きっと思ったことは同じだったでしょう。

『え?この人も美容師?』

先輩方もみんな等しくジャージを来ているのですが

私たちが着ているジャージとは色が異なります。

そこで、『あ。同期の新人だな?』とか『先輩だな?』とかを見分けるのですが

最後に入ってきた

【先輩たちが着ている色のジャージを着たヤ〇ザ風の人相をしている背の大きな人】

その方だけはどう見ても美容師ではない。。。

 

こちらを一瞥すると片手を振りかぶったかと思いきや

ものすごい勢いで体育館の鉄の扉を閉めたんです。

それはそれは轟音でした。

その先輩を認識して一瞬黙った人。

気付かずしゃべり続けていた人。

ボーっとしていた人。

全員が一様に反射で固まり、音のする方を見ます。

 

先輩は言いました。

『てめぇらー!こっちが黙ってりゃ、いつまで五月蠅ぇままなんだ!』

 

ここから想像を絶するに余りある壮絶な3日間が始まります。

 

私は学生でなくなったんだと知ることになりました。

 

そう。

私の美容師はここが原点であり。

私の今、仕事を成す上での考え方はここから始まります。

(上述した全てが映画のタイトルが出るまでのオープニング映像として作れそう(笑))

 

結果として研修ではシャンプー練習もカットの練習も当然ありません。

やったことはと言えば。。。

 

自分の限界を超え、大きな声をひたすら出す。声が枯れたら枯れた中でのマックス声量で出し続ける。

 

自分たちの限界を超え、集団で統一された一糸乱れぬ団結行進をする。ひたすら掛け声は『左!左!左右!』

最終的に掛け声は『ダッ!ダッ!ダッミッ!』となる。

 

自分の限界を超え、満面の笑みを保ったまま表情を固定させる。一定時間固定できたら着座を許可される。

私を含め数人が終日、着座を許可されぬまま白い眼を向けられ続けることとなる。

 

自分の限界を超え、ひたすらスクワット。途中で限界がきたら先輩が両脇を抱え限界突破をさらに狙う。

私なんて当然、早い段階で限界を迎えるのですが体重が軽いようでマリオネットのように先輩に体を上下され続けることとな

る。私の口からは何かがこぼれ続けている模様。

 

自分の限界を超えた早朝、座禅を組み半眼のまま無我へと入る。途中で限界(眠気)がきたら低頭し警策を受ける。

山中湖という土地柄か大きな虫(アブ?)が自分にとまろうとも動くことは許されはしない。やはり動けば低頭し警策を受ける。

 

自分の限界を超え、綺麗に食事を終わらせ後片付けを済ませる。

疲弊しきっていて腹など減りはしていないのですが残したら『きっと何かある』と察せられすぎ吐く限界まで口に入れてみる。

 

などでしょうか。

 

ここに1つの嘘も、土沼お得意の『盛り』もありません。

私は当時全くそんなことは思いませんでしたが最近の言葉を借りれば

マインドコントロール研修なんて言葉がありますね。

 

心を支配されたつもりなど私は毛頭ありませんでしたが

一般的なマインドコントロール研修の特徴を取り上げますと

・参加者を一定期間、軟禁状態に置く

・参加者の初期の価値観、行動などを恐怖と怒号で全否定し、統制する。

・大声を出す、異常な長距離を行軍させたりするなど、「自分の限界を突破」する疑似体験をさせる。

・「会社の理念」などを唱和、暗記させる。暗記するまで繰り返しテストなどを行う

・最後だけは講師、教官たちが異常に優しくなり「お前たちはよくやった」と認め、ギャップを演出し感動させる

 

おかしいな(笑)大方一致しているぞ…。

 

確かに最後の最後の講師(全体を統括していた強面すぎる先輩)が話してくれたまとめの話しで全員泣いていましたね。

私も例に漏れず泣いていましたね(笑)

あれは何の涙だったのでしょうか?

確かにあれは解放される喜びの涙なんかではなく別の達成感だったように思います。

でも、やっとこの鬼…。

おっと口が滑った。

から解放されるなんてパラダイス!

どんな困難がこれから先待ち望んでいたとしても乗り越えらるぞ!

と思った矢先、配属先に帰ったらその全体を統括していた鬼軍曹が

私の店舗の店長だったという。

 

四面楚歌とはまさにこれ(笑)

解放されぬまま5年ほど一緒に働かせて頂きました。

 

呼ばれれば間髪入れずに『はいっ!』と言えるようになりました。

もう、『ど』と一文字だけ言うかどうかで『はいっ!』と言っていましたね。

いやー沁みつきましたね。

 

確かに、社会人を実際10年以上やってみると

少し年の離れた今の学生は、家庭や学校で、こうした躾をされる機会が少なく

叱られることさえなかった人も多く、ややもすると

個人の自由という名目で我儘を通すことが黙認されてきているように感じます。

こうしたを世代の学生を受け入れるにあたって

通り一遍の無難な研修だけでは、学生気分から脱却させることは出来ないのかもしれません。

 

私自身、学生時代は中学、高校と6年間ぶっ通しのコンピューター部所属。

同級生の女学生からは『コン部!コン部!』とはやしたてられ

日の目を浴びることなく下を俯き続けたまま高校までを終え。

人生のデビューは専門学校しか残されていない!

と獅子奮迅の勢いを見せ美容学校の入学式に望んだものです。

何が言いたいかと言いますと。

運動部に所属したこともない人間に上下関係なんてなかったんです。

 

先輩として付き合ってきた誰かが身の回りにいたことは1度も無く。

まともに返事も出来ず。

 

私には必要過ぎるほどの益のあった研修だったと思います。

少しは学生気分ってやつから脱却をはかることが出来たはずです。

 

あ、ちなみに新人研修の最終日は早朝4時過ぎに起きて

山中湖1周マラソンかましてます。

前日にエンドレススクワットを男子のみやっています。

運動経験ほぼ0の私は、もはや足は棒でしたが。。。

 

やれば人間できないことはそうないようでなんとか完走はできました。

 

さらにさらに私の2コ上の先輩までは

なんと山中湖1周を終えた後

合宿所は目の前だというのに、おもむろに付き添いの先輩たちが一同に

山中湖に方向を変え、腰くらいまでズンズンと入水し

クルっと向き直ったかと思いきや『来いっ!』と叫んだそうな。

 

先輩(当時新人の)曰く、みんなで顔を見合わせ

『もう、行くしかないね!』と阿吽の呼吸で全員入水したそうです。

…。

やっぱりコントロールされてますかね(笑)

 

研修に参加してくれた先輩は出勤扱いではなく休日を消化しボランティアで同じ日程を共にして下さり

もちろん、新人研修に参加したことによる手当も無し。

(また、これがどうのこうの言い出すと話は尽きないので流しましょう。)

気持ち1つだけで、これから共に働く後輩のためにただ好意のもとに付き合ってくれたんです。

 

私には上下関係が何たるかはこれだけで十分でした。

 

これから共に働く後輩のために善意のみで指導をしてくれる。

きっとその先輩たちも新人の時に同じような経験があったのでしょう。

 

今でも、アルチアで働く私の返事はと言えば

聞いたことのあるお客様はご存知でしょうけどスタッフの誰よりも大きく明るい返事をしている自信があります。

少しでも背中を見せられていれば良いのですが…。

 

長くなりましたが最後にオチの話を1つ。

 

この私が体験した新人研修。

2年後の3年目と4年目、なんと指導するトレーナー側として参加するという(笑)

(だって鬼軍曹の直属の部下なんですもん。)

この、もやし野郎土沼が。

あの、ヒョロノッポ土沼が。

その、目の下のクマが永遠に取れ無さそうな土沼が。

 

叫んだそうな。

 

『もっと声出るだろ!』

『腹から出せよ!』

とか。

 

本当、どの土沼が言っていたんでしょう(笑)

 

後、私の担当が【食事担当】

全員が食堂に集合し新人全員、トレーナー全員を私の指揮1つで

食べ始めさせたり、止めたりするという。

 

あんまり話した内容は覚えていないのですが

違う場で自分が見させてもらった新人たちと話す機会があった際に言われました。

『先輩(笑)怒らないで聞いてくださいね(キャッキャッ)

お前らいただきますの意味知って食べてんのか!?って大声あげてましたけど

私たち、あの先輩こそ今にも倒れそうだけど先にご飯食べてほしいよね。

誰か分けてあげてきなよ!(キャッキャッ)って言ってたんですよ。』と。

 

みんな、そんな目でこっちを見ていたなんて(笑)

まぁ、土沼は元気です。

 

今回も6000字弱ほどの長文をここまで付き合って読んで頂きありがとうございました。

 

アルチアではスタッフを恐怖と怒号で統制するような研修制度は設けていませんが

しっかりとやってくれていると思います。

至らない不行き届きな点がありましたら何なりとお申し付けください。

恐怖を植え付けて見せます(笑)

 

おっと口が最後まで滑ったようだ。。。。。

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