美容師って接客業?(今回は長文なのでお気を付けください)

…どう思いますか?

 

一般的に「美容師」は接客業の1つという括りに当てはまっていると言われる意見が大半かと思いますが

僕は個人的に美容師は技術職だと思っているので

一般に受け止められる接客業のソレとは少し違った接客をしている場合があります。

 

少し話しが見えてこないですよね。

そもそもお客様の中では有名な話しかもしれませんが土沼はあまり

良い接客が出来ないタイプの人間です。

(可能であればずっと黙々とハサミだけ動かしていられたらなーと思うこともゼロじゃない)

何を隠そう人間性、言葉を変えればコミュニケーション能力が著しく乏しいのです。

反してスタッフの3人は私に比べれば天地ほどの差をつけ

良い接客が出来ていると思います。

名前は伏せますが後輩2人はまだ僕に直接モノを言えるスキルが錬磨しきれていないため

思うことはあれど、顔を伏せてしまい我慢するところが多いように見ていますが

7年ほど働いてます先輩は一味違います。

僕に対して「接客が悪い」と直接的に言ってきます。

自覚があったからまだ救いはありますけど、なぜ彼女は言葉を選ばずにストレートに

思いを真っ直ぐ告げられるのでしょうか?不思議でなりません。

 

あ。話が脱線してしまいました。

今回はその先輩の話しではなく美容師は接客業かどうか?といった点です。

 

一般的な接客業は一昔前の言葉を借りれば

「お客様は神様」で「お客様の言うことは絶対」だったように思います。

 

他所の美容室はどうか分かりませんが、アルチアは確かに接客業の中の美容室に変わりはありませんが

技術職屋だとおもっていますので「お客様の言うことは絶対」ということはありません。

 

そもそも個人的に飲食店に伺う時でも客(自分)が上という考えは一切持っていません。

僕が外食をするときは、単純に美味しいものが食べたいという気持ちが一番ですが

それは他にも色々な気持ちをはらんだものに相違ありません。

自分で作るのがめんどくさい。

片付けたくない。

というかそんな美味しいもの自分で作れない。

感じのいい声で「いらっしゃいませー」と言われたら「きたよー」って気分になる。(は?)

 

伝わりますでしょうか?

僕は自分で出来ないことをご飯屋さんにお願いして料理を作ってもらっているんです。

だからご馳走になった御礼として食後は「ごちそうさまでした」という言葉と共に

【対価】である料金を支払ってお店を後にします。

どちらかと言えば気分では僕は食事に行くとき完全に下です。

(話を持ち出した僕が上下を言い出してる時点で話が半分破綻しているのは見過ごしてください)

 

気持ちとしては僕が日々働いている仕事においても大きく差は無いと思っています。

(それでも決して横柄な態度にはならないよう日々気を付けています)

ちなみに、この気持ちの部分についてはスタッフに講釈を垂れた覚えは過去にありません。

なのでアルチアにご来店いただいているお客様が本当によく分かっていただいていると思うのですが

私以外の3人の接客は本当に素晴らしいと思います。

 

ここまで書いておいてなんですが今回の本題はここからになります。

 

『私たちアルチアではお客様の要望を全てお受けする美容室ではありません。』

 

お客様の要望を全て120点でヘアスタイルとしてお返し出来たら良いとは思いますし

私たちの技術不足・知識不足のためにお断りするなんてプロとして決してあってはならないと思うのですが

美容師にとっての商品はヘアスタイルの完成形なので、提供できそうにない場合はお断りするしかありません。

 

髪の毛は切って(能動)しまったら、もしくは切れて(受動)しまったら元に戻すことは出来ません。

私たち美容師には言わずもがな髪の毛を生やす能力はありません。

 

ですのでお客様からの要望を聞いた時点で、経験に基づいて「この方法でやろう」と

見立てがついてから作業に移ります。

行き当たりばったりで始めてから「やっぱり出来なかった」と言うわけにはいかないのです。

具体的に出来ない事例をいくつか箇条させて頂きます。

 

1.材料が無くてできない。(極稀なケース)

お店ではスペースが限られているため、使う頻度が少ないものをストックしておく

限界値が限られているため需要に応じて材料は仕入れています。

やるための薬の用意が無い場合は発注して届いてからでないとできません。

 

2.髪の長さ、髪質、生えグセ、既往歴でできない。(よくあるケース)

そもそも希望のヘアスタイルがお客様自身の髪の毛で出来ない場合があります。

希望するデザインがすでに髪の長さが足らない場合や

同じく希望するデザインが化学処理を要するもので現在のお客様の髪質では耐えられないことが容易に考えられうる場合

また切りそろえられた前髪にしたいものの、いつもの生えグセが強いため割れてしまい今すぐには叶わない場合。

 

3.時間、予算が足らなくてできない。(気を揉めてしまうケース)

薬剤を使用する場合、その反応時間はまちまちです。

経験値をもとに予定として設けた時間を著しく超えてしまうことが予想される場合

次に予約しているお客様が待たされることになります。

営業時間内にできないはなんとかできたとしても、お客様側の「〇時までにはお店を出たい」などの

時間制限に対応できない場合は、お断りせざるを得ません。

お客様が予約時間に遅刻する場合も同じです。10~20分程度の遅れでも、状況によっては

美容師の技術ではカバーしきれない場合があります。

(けっこう私たちの脳内はペチャクチャ話しながらも分刻みで次の工程を計算しながら手を動かしています)

ヘアカラーなどでは最近の流行りのデザインですと幾つもの工程が必要な場合もあります。

特殊なヘアスタイルは1回のカラーでは表現できず2回、3回と工程を要することもあります。

そういった工程をふむ技術やハイエンドな薬剤には別料金で応じる場合があります。

ですのであらかじめ予算を伺った上で希望するデザインが叶わない場合も

技術を始められませんのでお断りさせて頂きます。

 

4.自分にはできない場合。(時として美容師が病んでしまうこともあるケース)

経験不足、知識不足なためきっと上手に出来る人もいるのだろうけど

自分ではきっと満足に仕上げられないのではないかと思ってしまい

その場を乗り切る本意ではない言葉でお断りする場合。

(美容師はオシャレで時代の最先端を走っているイメージもあるかもしれませんが、中にはトレンドに疎い方もいます)

これは往々にしてその晩、夜な夜な闇に落ちていくケースで、

人によっては、もうこんな恥ずかしい思いはしたくないと次に同じことを繰り返さないように

勉強とトレーニングに向き直す人と

あきらめてしまう少数派と分かれてしまいます。

(後者にならないよう気を付けなければいけません)

次に、ベテラン美容師に多く見受けられるパターンですが

自分の思いとこだわりが強すぎて、お客様の望むヘアスタイルが肯定できない場合に

「どうして美しくもならないことが分かっているのに受けなければいけないのか?」と

客観的に見たら半ばナルシストが入っているようですがそんなに少なくないケースのように思えます。

ちなみに僕の場合は「それはちょっと」というスタイルをお客様が望まれた場合

お断りするのではなく違うもっと素敵になりそうなデザインを再提案していくという

大人な対応ができる素敵なタイプの美容師です。以後お見知りおきを。

 

今まで出会ってきた一部の美容師の中には苦手な技術を避けるように誘導する人もいました。

多くの美容師は1日中喋って仕事をしていますから得てして「口が上手」です。

お客様を持論で丸め込むのは造作もない事なのかもしれません。

 

初めてご来店のお客様の中にはこちらから似合うと思うヘアスタイルを提案した時に(例えばショートカット)

「今まで美容師さんに出来ないと言われてたから私にはショートは出来ないと思ってました。」

と言われることも多くはありませんが無い例でもありません。

それがどのような理由だったのか、調べる術もありませんが。

物理的にできなかったのか、その美容師さんにはできなかったのか。

同業者として残念な気持ちにはなりますが、その美容師さんとしては自分の得意なロングスタイルを

オススメしたかった側面もあるのかもしれませんが。

解決しようもない話しを論議するほど暇ではないので(ここまで長文を書いている時点で察し、)

今回はこんなところでお終いにしたいと思います。

 

まとめとしては

土沼は接客は下手だし、全然お断りもする美容師だけど

誠心誠意お客様と向き合って最善のヘアスタイルを親身に話を聞きながら提案させて頂ける

≪素敵な美容師≫だということでしょうか?

おあとがよろしいようで。